teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]

 投稿者
  題名
  内容 入力補助画像・ファイル<IMG> youtubeの<IFRAME>タグが利用可能です。(詳細)
    
 URL
[ ケータイで使う ] [ BBSティッカー ] [ 書込み通知 ]


いつだって君はそうやって、

 投稿者:夕夜  投稿日:2008年 6月19日(木)20時11分33秒
返信・引用
  火歩。自分で嫌だと思ったので。
やっぱ駄目だなぁ…

―――――――――――――――――――――――――

帰ろうと、2人歩き始めた時だった。

「ああ、そうだ火澄」
「んー?」
「さっきの、ありがとな」

さっきの、が分からなくて首をかしげた俺に歩は綺麗に笑って見せた。
消えそう、と思ったのは夕陽の所為だろうか。
俺は足を止め、歩も立ち止まった。


存在の軽量化



「さっきの、って何のことや?」

聞くと歩は目を逸らして後ろを振り返って夕陽を眺めた。
俺は手を伸ばしかけて止める。
届かないと思った。

「さっきねーさんに向かって言ってくれただろ。兄貴がねーさんの写真見て寂しそうにため息ついてたって嘘を」
「……嘘や、ないで?」
「嘘だよ」

その言葉はある人から見れば認めたくないようにうつるかも知れないし、やはり成長のためのだったのかと納得するかもしれない。

「兄貴はねーさんの事を……『羽丘まどか』さんの事をこれっぽっちも思っちゃいない」
「……気付いとったんか」
「兄貴から聞いてないのか?俺達兄弟の関係」

息が、止まるかと思った。
いつも通りの表情で告げた最悪への糸口に。

「本当…やったん?」
「まぁな」
「……っ、何で!何でそんな……」
「兄貴には逆らえないから。……逆らったら、色んなものを傷つける」
「だからってお前が!お前がそんな風になることない!」
「もう済んだことだ」
「済んでない!」

俺は戸惑いと清隆に対する怒りを覚えて怒鳴るように、駄々をこねる様に叫んだ。
歩は俺のそんな様子に少し目を見開いてから微笑んだ。
俺はそれが諦め混じりである事にも、怒っている俺に対する感謝だという事にも気付いてしまった。否、気付くような表情をされた。

「俺は……ずっと兄貴のものだよ。だから、ずっと諦めてきた」

どんなときも、兄貴以外のものに手を伸ばす事は許されなかったし、実際どんなに嫌いでも頭の中に浮かんでくるのは兄貴の言葉だったんだ。
そんなことを告げられて。フェンスを右手で軽く掴んで空を見る姿は、かろうじてこの世に繋ぎ止められたようで。

「親近相姦、とこの場合言っていいのか迷うけどな」

この場合の意味がつかめなかった。
歩がどれだけ真実に近付いているかまだ知らない。
だから、クローンだから、という意味なのか、肉体関係だけだから、という意味なのか分からない。
愛してるというのは清隆だけで、歩は許すことで清隆を苦しめて憎しみを抱く事のない人間で。
だから、分からない。
何故そんな風に清隆のことを思えるのか。

「兄貴が俺しか見えないことぐらい知ってた」

自惚れとかそんな事じゃなくて。それは真実で。彼はその真実にいくつも傷を付けられてきて。
なのに、彼は微笑む事を覚えて。

「兄貴は何がしたいんだろうな……」

ブレードチルドレンなんて関係なく。
鳴海清隆は己しか見えていない。
何のため、何を、なんて分かりきっている。
歩も、それを分かってる。
欲しいのはたったの一言。
救いを求めた神が願ったのは天使からの一言。誰よりも何よりも愛おしい。自分しか見えなくなるように、手を伸ばさなくなるように育て上げた最愛の。

「歩っ……!!」

帰るか、と歩き出した歩を正面から抱きしめた。
驚いたように目を見開いて小さく疑問系の言葉が漏れたのを聞いた。

「お前はお前や!偽りなんて与えてやる事ない!」

神に捧げられる生贄のように。
望んで覚えさせたら意味も分からず言葉を発する鳥のように。
一人孤独の海で歌うことで幸せを求めたローレライのように。

「いるだけで……いるだけでいいんやで……?そんな風に清隆を想おうとしたら歩が可哀想や!」

腕の力を強くすると驚いた様子だった歩が小さく笑った気がした。
大丈夫だと繰り返して歩は俺の頭を撫でた。
俺は夕陽が沈むまで……歩が空を見上げるまで、歩を放さなかった。
 
 

ロイズした異世界

 投稿者:夕夜  投稿日:2008年 6月19日(木)20時09分9秒
返信・引用 編集済
  無理だった。出血させたいだけだった。


――――――――――――――――――――――――――――――

危ない、と思った瞬間は遅い。
それは今までにも何回か思った事がある事だが。
何で家事などに限ってこの義理の姉は破滅的なおっちょこちょいさを出すのだろうか。

本人が何かに触発されたらしく、やる気を出して料理の本片手に俺を追い出すものだから、ついつい気を抜いてしまい、何かやらかしても皿割るぐらいだろうなと思っていたのだが、まさか包丁と皿ダブルで怪我しそうになるとは思っていなかった。
おさげ娘や高町と竹内もついているからというのもあったのだが、やはり油断と言うのは禁物だと思う。
一応、様子は何回か見ていたけど、何故かよく来る奴らと兄貴の相手をしていたので気付けなかった。否、気付いた時はもう止められる状況じゃなかった。
だけどまあ、そのまま何もしなかったら大怪我するのはねーさんで、(危険を察知して回避するのは戦闘中、あるいは勤務中なのだから家事でこうなった場合、どうなるかは目に見えている)一応、俺の方が家事方面での事には全般的に慣れているし、今なら間に合わなくもないと思ったから手を差し伸べたわけで。

「…だから無理して家事するのは止めた方がいいって言ったんだよ」

間に合わなくもないと思ったのだがやっぱり全て回避するのは無理だったらしい。
少し、手に傷を負っている。絆創膏で間に合いそうだ。

「歩ッ!?」
「あー兄貴、ちょっと救急箱持ってきてくれ。ねーさんに絆創膏貼るから」

ああ、にしてもシンクも結構汚れたなあ。まぁ血だから流せば落ちるけど。
それより割れた皿と血塗れたまな板だよなぁ。普段から魚さばいたりしてるから血の落とし方は慣れてるし、今も水出しっぱなしだから問題ないか。
出しっぱなしは問題あるな。もったいない。傷口洗ったら止めるか。

「あ、あんたの手当てが先よっ!」
「っていうか弟さん!落ち着いてないでまず包丁放して下さい!」

慌ててもしょうがないと思うし、今両手とも怪我しているからちょっと置くのに困るのだが。
そんな事を一瞬考えていると浅月が俺の手から包丁を取った。刃の部分を握っていたので、傷口を深めないように器用に取られる。

「あ、悪いが浅月、それ水で濯いだら布巾で拭いといてくれ。水気と血で錆びそうだから」
「そーゆう場合か!?さっさと手当てしろっ!」
「その前にねーさん、それ以外怪我ないか?」
「え、ええまあ」

それはよかった。手を出したかいがあるものだ。
安心して少しため息をつくと隣から二人に引っ張られた。

「人の心配してないでこっち来て!」
「傷口押さえるぞ、手、出せ」

イギリス兄弟に有無を言わせずダイニングテーブルの椅子に座らせられた。
そこまでひどい怪我じゃないからそんなに慌てなくても、と思わなくもないのだが、今何か言ったら実力行使されそうだ。

「あ、火澄。割れた皿を危険物の袋へ入れてくれ。怪我しないようにな。何ならゴム手袋あるからそれ使え」
「そんな心配してないで大人しく手当てしてもらってくれ!」
「そーやそーや!」

とか言いながら浅月まで一緒に4枚分のカケラを拾ってくれている。
そこで自分の手の違和感に気付いた。

「洗った時落ちたと思ったけど、残ってたか」

よく見ると白いカケラが刺さっていた。
仕方ないから抜くか、と思ったが結構深い。仕方なく抉るように取る事にした。
よし、もう残ってないな。
後でこのカケラも危険物の袋へ入れよう。どんなに小さくても分別はしなくては。

「…鳴海さん。痛くないんですか…?」
「いや、それ程」
「それは痛みが酷いから麻痺しているだけだろう」
「歩君、まだ止血終わらない?」
「まだ完全に止まってないな…破片はさっきとったからもう残ってないようだけど。あ、あさ…「「「そっちの心配しなくていい(です)から」」」
「……」

3人同時に言わなくても。
そこで、はた、と気付いた。
普段一番騒ぐ鬱陶しい人間が大人しい。
あ、まずいな。

「あに…「少し黙ってろ歩。手当て終わったらじっくり話すから」
「……」

それはそれで、嫌な予感が絶えない。なんて言ったって目の前の兄は珍しく怒っている。もしかしたら初めてかもしれない。
まぁ黙っていろと言われたし、周りの視線も痛いので後で色々しようと手当てをする兄の手つきを見ていた。
流石と言うかなんと言うかちゃんとやる事やって手当てしてくれている。
それ程やったことが無いはずなのに慣れた手つきに見えるのはやはりこの兄だからなのだろうか。

「終わったぞ」

思ったよりも丁寧にされた手当ては自分が思っていたより早く出来たようだった。
多少思考が上手く回ってないのに少し疑問を覚えたが眼前の兄の様子がおかしい事は確かなので何も言わないでおく。

「だ、大丈夫?ごめんね…歩」
「皿割った事か?それなら慣れてるから別に良いけど」
「そうじゃなくて!怪我させちゃった事よ…」

ああ、どうやら責任を感じているらしい。
結構、目に見えて沈んでいる。

「別に俺が勝手に手ー出しただけだろ。ねーさんが謝る事じゃない」
「あのねぇ…」
「?」

呆れたようにため息をつかれたので、首をかしげたのだが、それ以上何かを言う気はなさそうだったので、視線を投げかけてくる幾名かに自分の視線を移した。
もう手当ても終わったし、出血止まっているので、そんな痛々しそうな顔で視線を送られても困るのだが。

「あゆむー大丈夫なん?」
「いや別にそう騒ぐほどの物では……」
「あのねぇ、歩君。確かに器用に急所や動脈を避けていたとはいえ結構傷も深いし出血量も多いしこれが騒がないでいられることじゃないって事ぐらい分かって欲しいんだけどなー」

怒っている。超笑顔でだが確かに。
まぁ心配してはくれたのだろうし、仕方ないのかもしれないが。

苦笑してそれに返したとき、ラザフォードがつい、と指先に触れ手を軽く上げさせられた。

「お前は、ピアノが好きなくせに指を大切にしていないな」

眉間に軽く皺を寄せて低く呟かれた。
多分こいつも怒っているのだと思う。何故……なのかは多分カノンと同じ。

「そのつもりは無いんだがな……」
「嘘です。 鳴海さんの事なら何でもしってますから。ほんっっとに自分のことになると無頓着なデータは結構あるんですよ」
「また妙な日本語を」
「人の言葉にケチ付けないで下さい。言動の自由は法律で決められている事です」

その言動自体が犯罪的な場合何かの法律に引っかかるのではないだろうか。
まぁ、いいか。とさして良くもないのだが、何となく納得してみる。
何気なく手に巻かれた包帯を見てみると在りし日の既視感に襲われた。
つまりはアレだ。『懐かしさ』。
前にもこんな事はあっただろうか。手に包帯を巻かれる事が。

少し記憶を辿ってそこに行き着き兄貴を見ると自分よりも先にそれに行き着いていたことが分かる。
やはりこれにも苦笑するぐらいしか返す方法が無かった。

「本人があまり重大に思っていないことを思い出して責任感じられても困るぞ?」

少し意地が悪いかもしれない。この兄がこう見えて少し優しいところがあるのを知らないわけじゃない。

「……責任を感じているわけじゃないさ。ただ、あの人の間に何故自分が入れなかったのかと思ってるだけだ」
「それこそ困るだろ。……アレでよかったんだよ」

思い返してみると、あの出来事を懐かしむほど余裕が出来たのだと感じて自分でも意外に思う。
壁に伝う紅も目の前で吐露される憎しみも愛情も今日のことのように思い出されるのに。
 

lost my cry

 投稿者:風凪夕夜  投稿日:2008年 6月 7日(土)15時16分21秒
返信・引用
  書いてて無理だと思った。レインがでしゃばりすぎている。
清隆は3日に一度歩を軟禁しようとしているのでピッキングの技量も上がるってもんです。



ねぇ、歩。
鳥が歌うの。
ほら、見て?
羽根は空を舞うためにあるわけじゃないかもしれないし、飛べない鳥だっている。
でもね、いのちは歌うの。
そしてね、あなたの背には羽根がある。
羽根はね、形あるものじゃないと思うの。
古来から人は天使を神の使いとしてみてきて、人間には羽根が無く当時は空を飛ぶ方法なんて無かったから、憧れを込めて天使に羽根を描いてきた。
でもね、天使は神の使いなんかじゃないと私は思うの。
みんな、天使なのよ。
何かをすることを楽しいと思ったり、自由に動いたり、大切に思ったり、笑ったり。
そんなときにね、私には羽根が見えるの。
どんな生き物でもどんな人間でも、その背に羽根が見えて歌っているように見えるの。
私はそんな万物たちの歌が大好きよ。

ねぇ、歩。
あなたのピアノは風みたいね。
優しくて、あたたかくて、綺麗で。
あなたのピアノは空を翔けてる気持ちになれる。
ふふ、勿論曲目にもよるけど。
そんな音を出せるのはあなたがピアノを理解してピアノを引き立たせてあげてるからなのね。
あなたの魂がとても綺麗だからなのね。
私にはいつもあなたの背中に羽が生えて見えるわ。
あなたはとってもピアノや万物を愛してるのね。

ほら、木々やみんながあなたのピアノを待ってる。
私は歩のピアノで歌いたいな。
ねぇ、弾いてくれる?





「…さん。なーるーみーさん。」
「悪い、聞いてなかった。」
「もーこの頃ぼぅっとしてる事多くないですか?」
「そんな事ないだろ。」
「そーですかーー?」
納得のいかないという顔でひよのが顔を覗き込んでくる。
歩はため息をついてマグカップに口を付けた。
マンションの自宅に今朝押しかけてきた面々は高町以外我が物顔で居座っている。
高町は常識人なので遠慮してくれたり押しかけてきた事を謝罪したりしてくれるのだが、他は全く気にせずにくつろぎやがっていた。
高町だけに遠慮させるのも悪いしもう慣れてもきたのでべつにいいと、もう半ば諦めて自由にさせている。

外は花粉症の季節なので花粉が舞ってる…筈だったのだが、雨女が一人訪ねてきたので土砂降りになっている。
窓ガラスに雨が当たり下へ流れていき、外を見せるのを嫌がるかのように薄い防犯ガラスを覆っていた。



「あら、歩は昔よりはぼーっとしてる事少なくなったわよ?今はちゃんと呼びかけたらそれらしい反応するじゃない。」
その雨女であるレインはクスクスと笑いながら摩り下ろしりんごを入れた甘さ2割り増しの紅茶に口を付けている。
レイン=雨だから雨女と言うわけではないが、俺を訪ねてくるときは必ずと言っていいほど雨が降っている。
ちなみに、本人は昼間降る雨は頭痛がするから嫌いらしい。

「…余計な事言うなよ。それに一応当時だって反応はしてただろ。」
「普通に反応するようになったのは9歳からじゃない。その前はぼーっとしてても言われた事は自動的にやっててぼーっとしてるのを見抜けたのは私と清隆ぐらいよ。」
昔なじみと言うか…それほど長く一緒に居たわけでもないが半年に一度は会っていた一応それなりに信用できるであろう人間が言うのだから間違ってはいないのかもしれないが。
からかうように言われると反抗したくなるのは何故だろう。
「っていうかお前らいつから知り合いなんだ?」
さっきまでからかいにからかわれ弄られていた浅月が椅子に座り自分で紅茶を淹れ始めた。
家事をやってるのかイギリス兄弟の影響か何気に紅茶を淹れるのが上手い。
「うーん…私のほうは歩が試験管に居たころから知ってるけど…実際あって話したのは歩が2歳の頃かしら。」
「そんな前からなの?」
何故かレインと竹内は気が合うらしく2度目に会ったと俺が思ったときは2人とも親しく敬語なしで話していた。
竹内はレインが持ってきた試作品だという菓子に手を伸ばし、試飲してくれともってきたオレンジジュースを継ぎ足していた。
さっきからのこのくつろぎペースは崩れる事は無いらしい。
「考えてみれば結構長いのね…いいえ、短いのかもしれないわ。」
「え?」
レインの台詞に疑問符を浮かべたのは竹内だけではなかった。
いつの間にかこちらを向いているソファーに座ったイギリス兄弟に火澄までこちらを向いている。
その目が語っていた。『興味津々』。
珍しくラザフォードまでもがそれを表している。
この辺で止めた方が自分のみの為のような気がするが口をはさんだ方が何かありそうで止めた。
レインなら多分話しが妙な方へ行ったら止めてくれるだろう。

レインはその疑問符を笑ってはぐらかした。
人を欲求不満にしたり手がかりをばら撒くのが大好きなのだ。そんなところは14年前から変わらない。
「あの頃の歩もまた可愛かったなー…」
「写真とか無いの?」
「レインさんなら撮ってそうですけど」
「私は持ってないわね。一枚も。」
「私は、って事は誰か持ってるんですね?」
「世界一ぶっ殺したいブラコンがアルバムに閉じてるはずよ。歩が幾つかネガごと処分したからそれ程残ってないかもだけど。確か警視庁の鳴海まどかのデスクの引き出しの鍵のかかった清隆専用スペースの中に。」
普通に妙な情報を持ち出してきた。
おさげ娘もそうだがこの社長もいったい何処から情報を手に入れてくるのだろう。
一生、聞けはしないだろうが。
「鳴海おにーさん専用スペース?」
「あの野郎自分のデスク引き払ってその代わりにソファー入れたから自分のデスク持ってないのよ。だから鳴海まどかのデスクの一番上のスペースが清隆の引き出しでそこにたっぷり入ってるわ。」
それは初耳だ。
今度捨てに行ってついでに斉木さんに会ってこよう。
「他にもソファーの中とかね。自分で改造して収納スペース作ってたから。あ、歩。あのデスクの鍵は自分でピッキングできるわよね。製品番号DI-5397。」
「シリンダー錠じゃないな。出来るだろ。前回と鍵変えてないらしいな。」
「前回は何だったっけ…ああ、あれか。」
「口外するなよ」
「わかってまーす。」
子供っぽい仕草で軽く挙手をする。
返事をしたって事は本当に口外する気は無いらしい。
「っていうかすみません、鳴海さんピッキングできるんですか!?」
「上手いわよー。何処で習ったのか知らないけど。何故か技量も上がってるし。」
「ああ、それはこの間浅月に習ったから。」
「俺も初めて歩がピッキングできるって知ったときはかなり驚いたけどなーー;;」
何故か浅月に会い一人暮らししてるらしい彼の家に行って話を聞いて何となく教えてもらった。
何と言うか…浅月は本当に面倒な事を押し付けられてきたんだなと同情した。


「へぇ…抜け駆けかい?香介」
「……」
「なっ!おいまてその武器をしまえっ!!」
何故かカノン・ヒルベルトとラザフォードが手元から武器を出し、立ち上がった。
浅月は冷や汗を流しながらこっちに目線を向けてきた。つまり『Help me!』という事だろう。
「止めときなさいなカノン、アイズ。男の嫉妬と言い訳ほど見苦しいものってないから。大体、こういうところは包容力と許容力を見せなきゃ。『君の事を信じてるよ』位言えなきゃね。程よく束縛するタイプが一番好かれるのよ。歩はどちらかと言うとそういうタイプの方が好きじゃなかったかしら。」
何故そこに俺が出てくるのか解らないが『同意しなさい』とレインの目が言ったので一応「まぁな」とだけ言ってみる。
すると2人はおとなしく武器をしまいソファーに座った。
良かった。あの2人に暴れられたら家が散らかる。
「た、助かった…サンキュ」
「どういたしまして。半分は香介のために動いてよかったわ」
「半分かよ」
いつものように笑いながら浅月はレインの頭を小突いた。
レインは笑いながら軽口を叩いている。
この二人は姉弟のように仲がいい。
見てるこっちが微笑ましく思えてきた。
「え、で、話を戻して浅月さん以外誰に習ったんですか?」
「…独学」
「あー…成程。よーく解ったわ。」
「は?え?どういう事です?」
レインは俺の言葉に直ぐに物事を悟ったようだが、おさげ娘と幾人かは頭に疑問符を浮かべた。
竹内と高町はレインと同じように同情の視線を送ってきている。
同じような経験があると見た。
「清隆様に…」
「どっかに監禁されたのかい?」
ああ、やっぱり同じような覚えがあるらしい。
確信を持てた。持ちたくも無いけど。
「監禁…ではないな。軟禁だ。」
「それって、どれ」
「どれって程あるんか」
「私が数えるだけで15程」
「「「「「「「多い(だろ)(です)(な)」」」」」」」
「実際は38以上だな。それからのは数えてない。」
「「「「「「「増えて(と)る(じゃ無いですか!)(だろそれ!)(じゃないか!!)(な)」」」」」」」
わざわざ揃って言う必要が感じられないんだが。
にしても、綺麗にハモっている。
「昔の清隆…今もだけどね…そのまま台詞を棒読みで行くと『ああああ歩がどんどん可愛くなっていく…!これじゃあ外を歩かせればいらないゴミ虫どもがつく!よし!私が独り占めするため…ひいては歩をお嫁に行かせない為にもあまり外に出さないでおこうじゃないか!』って。」
見事な棒読みで突っ込みどころのある台詞を言ってくれた。
ちなみにそれは4年前の事だ。確か。
「うんうん。当たり。4年前の11歳の頃よね。それもまだ鳴海まどかと会ってない頃の。ストッパーがいないから本当に可哀想だったわ…」
口に出した覚えは無いがしっかりと思考を読まれているらしい。
そういえば誕生日前だった。
今はねーさんがいるからそんな事も少なくはなったけど昔は大変だった。
懐かしいような早く忘れたいような思い出だ。

「ほかにもねー『愛しい愛しい歩の肌を人目にさらすなんて…!』とか言って小学校とか中学とか高校とか全部水泳休ませたりねー。」
「うわ、そんな事したんですか」
「ああ、それに関しては別にいい。図書館で本読んでるほうが楽しかった。」
「…だから塩素アレルギーって事否定しなかったのね。」
「別に泳げるんだし、出る必要ないだろ。」
「ま、ね」
ちなみにプールを休ませられたのは幼稚学校の頃からだ。
「あとは…あれね。」
「あれ?」
「『お兄ちゃんと離れるなんて歩は寂しいだろう?お兄ちゃんは寂しいぞ!』とか言って修学旅行とか臨海学校とか休ませようとするかあるいはついていくって言い出すとか。」
「ちなみに、そのときの鳴海さんの反応は」
「蹴り技少しと1週間のシカトと家事を自分の分のみ。」
「自業自得ですね。」
「本当にね。」


♬*:♬♪゚・:,。♬o。*:..♬♬.:*:・♪



ここで断念。いやもう削除したいけど少しもったいない気がするのでさらしてしまう。
軟禁だからまだ抜け出せたものの監禁だったら歩の貞操が危ない。逃げられないよ!
一応、浅鳴風味で書いたつもりだった。
苦情は各々心の中でお願いします(ぶるぶるぶる)
 

ボツ 灰色の螺旋2話

 投稿者:風凪夕夜  投稿日:2008年 5月31日(土)16時25分10秒
返信・引用
  纏まらなすぎて没にしたもの。
やっぱ何度見てもやだな。



†別れとカルマと十字架と†

忙しい。
忙しいったら忙しい。
噂だと本部よりは忙しさもマシらしいが、それでも寝る暇なんて殆どないに等しい。給料は働きに比例しないから益々疲れた感じがする。

シィフと李佳と蝋花は愚痴をこぼしながら書類をかかえて司令室に向かっていた。
科学班見習いとはいえ仕事量は多い。
少しぐらい愚痴を零さないとやっていけないのだ。

ノックをして司令室に入ると、そこには何故かバクとウォン以外に科学班の2人が立っていた。

「あれ?レインさんにアユムさん!」
「どうしたの?二人とも」
「呼び出しか?お前らの事だから善い方の呼び出しなんだろうけど」

3人はそれぞれに驚いた顔をして書類を机の上に置いた。
2人は苦笑してバランスの崩れそうになる書類を支えた。

「実は今話されたんだけどねー。私達科学班見習いから科学班になるの」
「「ええーー!!??」」
「おめでとう」
「アリガト、シィフ」
「そこまでならまだ良かったんだけどな」
「「「?」」」

3人は揃って首をかしげる。
こうやって見ると仲の良い3人兄妹のようだ。

「私達、本部行きなのよ」
「「「!!??」」」

そればっかりはシィフまでもが驚いた顔をした。

「本部…」
「すげえ!よかったじゃねえかよ!」
「僕たちの憧れでもある本部の科学班になるなんて…流石だね」

3人は純粋に祝ってくれているのだが。
超笑顔で眩しいぐらいなのだが。

「ここから離れるのはあまりいいとは思えないのよねぇ…」
「何言ってるんですか!」
「ここが好きなのは知ってるけどね」
「俺もお前らと離れんのはヤだけどな。頑張ってこいよ。直ぐに追いついてやるから」
「ウォーカーさんに宜しくお願いします!」
「結局それか」

李佳の突っ込みに笑いが起きる。

「クロスに会うことになるかもしれないしー」
「仕方ないだろう。クロス元帥なんていう色んな意味でご立派な人の弟子になれたのを光栄に思わなくては」
「分かってるわよ。バク支部長」

レインは支部長のところだけをわざわざ強調して言った。
バクはレインの嫌味に半分沈みかける。
ウォンがそれをフォローして立ちなおさせる。
いつもの中国支部の風景だ。
ただ、それも今日までの事。
明日、アユムとレインは本部に向かう。





カツカツと音が響く廊下を2人で歩いていた。

「あそこまで純粋に喜ばれると良心が痛むわね」
「嘘をついている訳じゃない。一応向こうでも科学班なんだ」
「そうだけどねー」

レインは憂鬱そうにため息をついた。
妙なところを自覚する人間だとレインは自負していたのだが。

「あーー!何で私行ってもないのにノスタルジアになってるのかしら!」
「故郷じゃないだろ」
「ホームは家みたいなものでしょ。リナリーが言ってたじゃない」

歩の冷たい反応にレインは頬を膨らませて後ろ歩きに廊下を進む。

「気に入ってたもんな。ここの事」
「まぁクロスの愛人のところよりはね」

自然と口から出てくるのは憎まれ口だった。
クロスは自分達の師匠でありながら優しさをくれた覚えなど一度もない。
思い出すのは嫌な事だけだ。

「今から出てくってのに思い出すのはクロスのことなんだけど」
「アレンと久しぶりに逢うのはいいとしても師匠と会うのは戸惑われるな」
「ねー」

ここにいたのは僅か半年。
クロスの元にいたのは一年。
半分だけだったのに。

「いい思い出はこっちの方が多いのよね」
「本当に」

外に出て、二人は中国支部を振り返った。
外見からは組織だと思えない洞窟。

「いままでありがとうございました」

レインはそこに礼をした。
歩も目礼する。
二人は同時に目を開けて迎えの馬車へ乗り込んだ。

空は生憎の曇りだった。
 

ボツ 黒歩パラレル

 投稿者:風凪夕夜  投稿日:2008年 5月31日(土)16時18分52秒
返信・引用
  路地裏。深く深く奥に進んでいく。
足音も響かない。呻き声にも似た混沌の所為で。

「お?珍しい奴がいるねぇ」

前方からの卑しい声。
聞きなれているわけじゃないが、聞いた事がないわけじゃない。

「お前か」
「ひっさしぶり~。どーしたよ、こんな所で一人。喰われちまうぜぇ?」
「あの人に会いにきたんだよ。何回も俺を呼ぶから」
「へぇ~でも場所知ってんの?」
「お前は?」
「知ってるよ~ん」
「なら案内しろ」
「うっわぁ強気。何かくれんの?」
「何が欲しい?」

クスリと妖艶に笑って申し訳程度に付けられていたネクタイを引いて顔を近付ける。

「降参降参」

男は手を上げて離れた。

「いー性格してるよ、お前」
「こんな性格じゃなきゃここにはいられないって言ったの、誰だ?」
「俺でしたね、へーへー。一本ど?」
「貰っとく」

シュと火をつけて煙を吸って吐き出す。

「なぁ、押し倒しちゃ駄目?」
「行き成りか?」
「なんつっかお前、綺麗だわ。俺のものにしたい」
「口説くのはもっと上手くやれよ。俺は抱かれてもいいが利益がなきゃ嫌だ。それに、俺は誰のものにもならないよ」
「玉砕?うっわーカナシイなぁ」
「今度はもっと勉強してから来いよ」
「はーい」

クスクスと笑いながら煙草を弄ぶのを目を細めて見た。

「なぁ。歩?」
「何だよ」
「んーやっぱご褒美頂戴?」

男のお願いに歩は笑う。
もう一度ネクタイを引っ張って口づけた。

「Thank you」
「You're welcome」

男は歩の手を掬うと指先に口付けた。

「じゃ、ここの二階ね」
「分かった」

歩は煙草を投げてよこすとそのまま階段を上がっていった。

「やっぱ美人はいいねぇ。強気な子は好きだよ。お姫様」

特に、普段良い子ぶってる子程、美味しいもんだよな。

遠くで小さく嬌声が聞こえた気がした。
 

レンタル掲示板
/1